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幻想小説・ファンタジー

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草祭 (恒川光太郎)
 恒川光太郎氏といえば日本ホラー小説大賞を受賞した『夜市』が有名であり代表作だとも言われています。私はそこに収録されている『風の古道』を読んですっかり氏のファンになってしまいました。
 実のところ私はホラーが苦手です。しかし、この作品はホラーティストはありますが、幻想的でどこか柔らかなところがあります。決して暗い気分になることがない、そんなところが私のお気に入りです。それではなぜこの作品を紹介しないのかと言われそうですが、それはいずれ別の機会もあろうかと思います。

 今回は氏の独特な世界観が横溢する『草祭り』を紹介しようと思います。

 氏は独特の景色を持った世界を描き出す作家です。
 『草祭』は美奥という不思議な街を舞台とした、六篇の短編からなる物語です。
 美奥は現実と夢のような世界の境界があいまいになっている空間なのかもしれません? そこでは人が獣に変わると言われています。各話の紡ぎだすそれぞれの主人公の物語。そうしてその六つの物語が繋がった時、美奥という秘密の場所が、ようやく私たちの前に姿を現します。
 「人はパンのみにて生きるにあらず」という言葉があります。
 私たちはこの現実という世界を確固たるものだと考えようとします。そうして夢と現実とはまったく別物であると考えます。しかし本当にそうなのでしょうか? 最終的には、それらは私という存在が感じ取るものだという意味から考えれば何ほどの差があろうかと思います。
 まさに人間は夢をも食べなければ生きられない、生き物のようです。

 どうかひと時の、夢のような世界をお楽しみあれ。
更新日:2012/10/05(Fri) 07:16 [修正・削除] [管理人に通知]   投稿者:かごめ 
裏庭 (梨木果歩)
 実のところ、私はファンタジーと呼ばれる類の小説はあまり得意なほうではありません。しかしこの小説はそのような方々にも喜んで読んでいただけるのではないかと思います。

 物語は照美と呼ばれる女の子が住む町に在る西洋風の荒れ果てた屋敷を舞台に始まります。その屋敷には戦前に日本に来たバーンズ家の人たちが住んでいましたが、日米開戦のために本国イギリスに帰国します。そこに居たレイチェルとレベッカという姉妹はこの物語の最後まで重要な関わりを担うことになります。
 そうして、お屋敷は日本に残り、子供たちの遊び場になる。だが、その屋敷の池で遊んだことが原因で照美の知恵おくれの双子の弟の純が亡くなります。そのことが照美たち一家(父と母)に暗い影をおとします。照美も心に目には見えない傷と闇を抱えます。
 その屋敷には、ある噂がありました。それは、屋敷は現実の庭だけでなくもう一つの別の世界の『裏庭』につながっているというものです。あるいきさつから、照美は鏡を通ってその裏庭に足を踏み入れてしまいます。
 そこには、化石となった「一つ目の龍」が解体されてしまったために、崩壊への音を響かせ始めた三つの王国がありました。元の世界に帰るために、照美は釣り人の「スナッフ」、双子の片割れで両腕を失った「テナシ」と不思議な冒険の旅に出ます。
 そうしてその旅は現実の世界とも微妙に干渉していることに、読者は気が付くことになるでしょう。そうしてさまざまなキャラクターに対する作者の思い入れを感じ取ることがあるかもしれません。何かを感じ取り何かを考えさせられれば読者はもう照美の立派な同伴者になっていることに気が付くはずです。

 この作品は第一回児童文学ファンタジー大賞受賞作です。しかし、児童向けの決して甘い話ばかりではありません。醜いことや残酷なこと、悲しいことやつらいことにも目をそむけることなく向き合っています。そのことは、読む者に改めて家族や人間の絆といった深いテーマに心を向けさせてくれます。

 私の個人的な感想になるかもしれませんが、物語が始まって中盤あたりで少し中だるみを感じます。しかし後半に入ると、とたんに物語のテンポが上がって、ぐんぐん冒険の旅に引き込まれていきます。そうして、怒涛のクライマックスへと物語はまさに奔流の如く一気になだれ込んでいきます。
 読み終わった時の様々な感想のなかにほんのりとした灯りのようにほっとした気持ちが私の中に生まれていました。

 この物語を子供ばかりでなく「子供の心を失わない全てのおとなたち」に贈りたいと思います。
更新日:2012/10/28(Sun) 07:28 [修正・削除] [管理人に通知]   投稿者:かごめ 
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